2003.6.20
今日青木のおやじさんから電話があった。ゾンネンシュタ-ンの一物の
写真が出来あがったという。プロの写真家が現像した、個展にも出せる立派な焼き付けらしい。
個展に出せるだって!まったく彼の発想も変わっている。為にならない事を考え付くのは
もしかしたら僕より上手かもしれない。だけど、マリリン・モンロ―だったら価値有るだろうね。
せめて、サルバドル・ダリだったら良かったけれどね。いや、ゾンネンシュタ-ンもフアン多いぞ。

2003.6.21
日本的な情緒を湿っぽいと言って嫌う人がいるけれど、僕は
好きだね。カビが生えない程度であれば、湿気歓迎です。粋が判る人、情が深い人、
寛容な人など、皆、乾燥などしてはいないですよ。小泉八雲は都都逸が大好きだったという。
魂の存在を信じている人はドライなんかに決してなれない。
「しっとり」したものが判るから「怪談」を仕上げる事が出来たんだろうと思う。
好きな都都逸を二つ。

色で身を売る西瓜でさえも中にゃ苦労の種がある
惚れた数から振られた数を引けば女房が残るだけ

2003.6.22
秋の海岸を散歩している時、沖を見ている女性に出会った
遠くを眺めると、息をするのが少しだけ楽になるでしょう?
大切なものは空気に似ています、海は生命のふるさとですから
お座りなさい、一緒に海を眺めるのも悪くない、、
ほんの少しの間だけ温もりが欲しい
仔犬が二、三度クルクルまわって又駆けて行く

潮風が霧の様に吹き付けて
波は砂から湧き出る泡を残して退いて行く
何度も何度も見た光景でしょう?
ええ、そうなんです
でもね、顔が見たくて振り向くと
何時だって、さようならと声がして
サラサラ崩れ落ちる砂を残して
消えてしまうのです

2003.6.23
駅が出来るまではとても静かな田舎だったが、もはや我が家の周りの林を除き、
まるで東京にいるみたいだ。ビルが立ち並び映画館まである。この前 art festival なるものを街でやった。
売れる訳がないのに、一画に絵を並べて他のブースを見て楽しんでいた。

彫金を扱っているコ-ナ-をふと見ると、麦わら帽を被り、透通った生地を
妖精の様に着こなした若い女性が店番をしている。他の店ではあまり売れていないのに、
若い男共、火に吸い寄せられる蛾の様に彼女の作品を買っている。妖精みたいでなく、
彼女は妖精に違いないと確信した。私は滅多にしないのだが、もうこの歳になると
面倒な装飾を捨て去り、単刀直入に切り込むんだよ。ただ僕には大切な女房がいる、
成功したら困るんだ、そこで一緒に作品を出している、彫刻家のネストル・グスマンに
ついてきてもらった。彼は未だ独身だからね。

お客が途切れた時彼女の前に行き、思いきって言った。
「僕達は絵描きと彫刻家なんだよ、だから美しいものには弱いんだ、美しいものを見て、
黙っていることに耐えられないんだよ」 彼女突然のたわ言に、何にも驚かなかった。
さすがは妖精!ニッコリ笑って「私には子供がいるのよ」

「ああ!もう駄目だ、あっさり切り返された」天罰があたった。、、、と思った。
こんな時の為のネストル・グスマン。「結婚していたの、それは残念、僕は
女房がいるけれど、彼は未だ独身なんだよ」

ここで、もし門前払いを食わせるなら、次の言葉は言わないよね。
「子供はいるけれど、独身なの」 僕の単純な頭は混乱してきたぞ、困った何を言えば良いんだ?
何だか彼女の目がうっとりしてきて、ネストルを全然見てくれなくて、あたちだけを見ている。

「あなたの目はとても美しい」  何てつまらないことを言っているんだろう、落ち着け馬鹿者。
「ブル-ベリ-を毎日食べているからなの」 「ヒ-!!ブル-ベリ-を食べると目が綺麗になるのか、
あたち知らないそんなこと」 其の時天は私を助けてくれた、お客が来たのだ。

良かった、やはり妖精をあまくみてはいけないね。別れ際に彼女は言った。
「何時も原宿にいるのよ」 そうなのか、鍛えているんだ。少しの時間だったけれど
とても楽しかったよ、さようなら。 彼女はもう大人だったが、次の句を創った。

夏帽子少女の細き手足かな

2003.6.24
今の家を建てたのは12年前ぐらい前で、地均しをする為にボロボロになった
ブルト-ザ-が、これ又かなり老人の親方と共にやって来た。人間の様にゼイゼイ息をしながらやっと動く感じの
ブルト-ザ-で機械の持つ冷たさはまるで無かった、本当に喘いでいるんだ。
ブルト-ザ-を運転する老人はポツリと言った。
「これは、もう寿命でね、とっくの昔に廃車にしてなければいけないしろ物なんだ。
良く稼いでくれた、、、。俺の家族みたいなものさ、だから捨てるに忍びない、庭に飾って置きたいが
狭い庭にそんな事は出来やしない、一体どうしたもんだか、、、」

着ているもの全てに対してではないが、僕は18歳の頃に着ていた擦切れて、向こうが透けて見える、
アロハシャツを今でも持っている。何故か捨てる事が出来ない。
物が勿体無くて捨てられないのと一寸違う。思い出の為とも違う。それはまるで、
生命のあるペットを捨てられない気持ちに似ている。
フェテシズムなんて言わないで、物にも魂が必ず有るって。

2003.6.25

「赤い靴」

   先触:赤い糸が長すぎた為に、たぐり寄せることが出来なかった御話しです。
   囁語:女の子は親の都合で遠くに引っ越さなければなりません、女性というものは子供の時から何をすべきか
       知っています、大好きな赤い靴だったのに、仲の良かった男の子に片方あげてしまったんだよ。
   先触:靴が血の様に二つに裂かれてしまった、、そしてその時から、それを貰った少年の胸に薔薇の棘が
       刺さってしまった、、、裂かれたものは元に戻らねばならない。
     望:何処へ参ろうとも、何処にてか、最も良きものを見出さん。

 カサノバ:私は女性を崇めるあまり、醜女から美女、少女から老女まで全て愛さずにはいられなかった。
       ドンファンは愚かだ、きゃつは選びおった、それに殺人までしおって。
   立島:私も数限りなく。
   精霊:聖なるかな、聖なるかな、量の聖者達。
   囁語:今ここに、胸から棘をぬくことが出来なかった老人がいる、小さな靴屋を営み窓には
       片方だけの赤い靴。
       ある時その靴を見つめている女の子がいることに気が付く、来る日も来る日も眺めている。
   精霊:聖なるかな、聖なるかな、質の聖者達。
   座長:何時も目出度く終わるを心がけております。
       
   老人:こっちへおいで、この靴がそんなに気に入ったのかい?
   少女:お母さんの薬を買いに来る度に見せて貰っているの。
   老人:丁度履けそうだね、あげたいけれどでも片方しかないんだよ、私も年だし、もしもの時大切な
       靴だから捨てられるのは悲しい。
   少女:私のお家にこれとそっくりな靴があるの。
   老人:、、、、、、、、。顔を良く見せておくれ、、、、、、。

   少女:有り難う、嬉しい、今度来る時靴、履いて来るわね。
   先触:老人の傷ついた胸は、こみあげてくる思いに耐えることができなかった、明日少女が来る
       頃には、倒れているに違いない。
   囁語:シ-、少女がやって来た。起き上がれない、お母さんの手紙をたずさえて。
       
   少女:どうしたの、おじいさん倒れてしまっていて、大丈夫?
     望:私は心深く住んでいる者です、少女が老人の頭を膝に乗せた時奇跡が起こりました。
   少女:お母さんの手紙を読むわね。「靴が揃って一つになった時、血の流れ出るのが止みました」
   囁語:天使の溜息がききたいかね、ヒュ-と鳴った風の音がそうなんだよ。

2003.6.26
「こんな夜は、、、」と炉の主。「こ、こんな夜は!」と旅の人。
そこにトントントンと戸を叩く音がする。
「入っています」と女の声がする。

炉話や二つの界の渡し守
二つの界に風吹き抜ける。「入っていますと又、女の声がする」

2003.6.27
広い海原を捕鯨船が行く  ザブザブザブン
オオ-イ鯨っこが見えたぞ−い  ザブザブザブン
鯨っこは逃げる、船っこは追いかける  ザブザブザブン
銛がズド-ンと打ち込まれる  ザブザブザブン
銛が広い海原にポチャリと落ちる  ザブザブザブン

2003.6.28
僕が18歳の頃母親は新宿の駅の傍で、日本で初めてという
モダンジャズ喫茶店「汀」をやっていた。レコ-ドは全部輸入版で、珍しいものが揃っているので、
ジャズ評論家の大橋巨泉、どた靴履いた歌手の丸山明弘、今やジャズの大御所、渡辺貞夫など
そうそうたるメンバ-が通っていたという。だが僕はどうもジャズがあまり好きになれなかった。
その代わり1940年から1968年にかけてのポップスは殆ど知っている。特にロックンロ-ル
当時はロカビリ-といっていたが、今聞くと涙がでるほど懐かしい。ロックンロ-ルではないがその中で特に、
日本では誰も知らなくて、イタリアでは有名な(Fausto Papetti)というサックス奏者がいる。
僕に言わせると、(シル・オ-スチン)よりム-ドが有る。どの世界でも見逃される
才能があるのだと、悔しい気持ちでいる。(What A Sky)と(Trust Me)この二曲
機会があったら聞いてみて欲しい。迷い星の音楽談義でした。

2003.6.29
新宿というのは今でも怖い処だが、1959年頃の新宿は違った意味で
恐ろしい処だった。未だ新宿駅ガ-ドのドヤ街が健在、各派のヤクザ達が入り乱れていた。
水商売の常、入り込んできたこともあったらしい。僕の両親は長い事タクシ-会社をやっていた。
昔の交通機関、駕籠掻きの雲助をもじって、業界では雲助家業と言っていた。
人身事故は毎度の事、派手なのはマンホ-ルから顔を出した途端、頭を車で吹き飛ばされた
何ていうのもあった。その度に、現場に行かねばならない。血まみれなんて珍しくもなかったらしい。
新宿で大きなヤクザの出入りがあって、その時白刃を持った二、三人を匿ってあげたと言う。
そしてその中に、名前はあげないが凄いどころがいたという。
その時から嫌がらせはピタリと止んだ、そこが今のヤクザと少し違うね。
俳優業の僕の叔父は、まだ碌な役をもらえず、酒を飲んでは憂さ晴らしに喧嘩していた。
半端な喧嘩じゃない、顔の形が変わるのだ。でも不思議なことに、良い男だった時は
役をも貰えなかったのに、潰れた顔になってから良い役を貰えている。
人生は本当に何が幸いするか、不思議だ。
このままでは、叔父は喧嘩で死んでしまう!ヤクザ達に写真入りの回状を送り
右の者とどうか喧嘩をしません様にと頼んだというから、僕の叔父は頭の弱い豪傑だったね。

2003.6.30
今真っ赤になって、太陽が膨張を始めている。こんな素敵な光景なのに、
見る人が誰も居ない。人類の栄光など遠い昔に塵になっている。物は皆塵になっている。
せめて愛の記録が何処かに残っていてくれなくては、日々のあがき面白からず、と若い頃
思っていた。でも違うね、綺麗さっぱり消え失せることは、逆に慰めになることに気付いた。
それにこの熱せられた塵の中に、生命のアダムとイヴは既に組み込まれているのだから。

2003.7.1
最近の若者は酷い食生活をしているらしい。この前テレビで冷凍たこ焼だけを毎日毎日
食べているという女の子が出演していた。そんなに美味しい物なのかと今日買ってきた。
皮はパリッとしてなく、身はブヨブヨしているので歯にとても優しい。
レンジにかけるだけなので、料理簡単。ナイフで切らなくても良い。
丸い形をしているので、凍っている時は石つぶてに利用出来る。
何だか腹が立ってきた、そもそも私はたこ焼などそれほど好きではないのだ。
たこ焼を使って素敵な俳句が出来ないしね、でも試しに創ってみようか?
遠花火たこ焼思い出しにけり   ん?悪くないかも。

2003.7.2
何故か突然、ゴルゴ-ン姉妹の一人、メドゥ-サ-を思い出してしまった。
1971年朝日新聞が「現代の幻想絵画展」をやった時、出品者全員に銀で出来たフリ-サイズの
指輪をくれたことがある。前田常作さんがこのメドゥ-サ-の指輪を大切そうに何時も指にはめていた。栄光の魔法の指輪だ。
僕はもっと凄い魔法の指輪を持っているので、メドゥ-サ-の指輪は大事にしまってある。
さて、今日個展の案内状が出来上がってきた、詳しいことは「ここ」
をクリックしてね。ところで、メドゥ-サ-というのは眼を開けて見なければ、石にならないんだよね。
もしも彼女が美形ならば、眼を閉じてキスしたいと思う僕は変態だろうか?
「立派な変態です」 「そういう声の主は?」 「座島です」

2003.7.3
僕が展覧会やることを知っているのに、機械でだけど
草取りを一万円でやってくれないだろうか?という酷い人が来た。まあ僕は世間から
そんな程度にしか見られていない。無理もない、画家とは建石さんや、七戸さん、谷神さん
大竹さんの様な人達を言うのだ。僕は魔術師ではあるが画家ではない。そして魔術師は
現実世界と深く関る事が出来ない。現実では無力なのだ。
そもそも私は宝探しを職業にしたかったのであるから、草取りなんて例え5万円くれてもやらない。
「100万円だったら?」
「やります!心を入れ替えて、やらせてもらいます」

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