山眠る     高松玲子
      

               山茶花の日向は母のゐる日向

             マスクして人遠ざける心地かな

             クレン一基二基三基冬夕焼

             山眠る星のささやき聞きながら

              笹鳴の窓より朝の来たりけり

             たつぷりと日を乗せ春を待つベンチ

             駄菓子屋に寄道をしてあたたかし

             春くるよくるよと水の圧し合える

             樟いつもどこか揺れをり鳥の恋

             一木に籠る鳥ごゑ春の夕

             白蝶のたたみし翅のうすみどり

             見えぬ風見せてさゆらぐ糸桜

             

          小鳥来る
     

             仲見世の朝のしづけさ小鳥来る

             登り来てわつと潮の香天高し

             あますなく海を眺めて秋惜しむ

             まつすぐに朝日のとどく石蕗の花

             枯蟷螂枯れを極めしあかるさに

             

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