人生は芝居であり、人はそれぞれ、役者であるといわれる。
その事実は早くも幼少期に始まっている。
ようやく片言を喋れるようになった子供の、独り言をいいな
がらの遊びを基型として、成長するに従って相当の演技力を
身につけ、いっぱしの名優になる。
ただし、劇場はなく、観客もペット以外にはいない。として
も、この絵に描かれているように、舞台はどこにでも見出す
ことができるし、すべて自作自演である。
広々とした野原の真中の廃屋の残片を背景にした、この童子
の一人芝居は淋しくもあるが、余りに美しく、状況の設定自体
が演劇的であるが、これは往時の回想というよりは、当時の
夢想そのままの延長であるだろう。
孤独の不安から湧出する夢想は、いくら美しくても悪いこと
はない。
瀬木慎一 ポストコレクションより