言葉の部屋2




観客のいない舞台


人生は芝居であり、人はそれぞれ、役者であるといわれる。
その事実は早くも幼少期に始まっている。
ようやく片言を喋れるようになった子供の、独り言をいいな
がらの遊びを基型として、成長するに従って相当の演技力を
身につけ、いっぱしの名優になる。
ただし、劇場はなく、観客もペット以外にはいない。として
も、この絵に描かれているように、舞台はどこにでも見出す
ことができるし、すべて自作自演である。
広々とした野原の真中の廃屋の残片を背景にした、この童子
の一人芝居は淋しくもあるが、余りに美しく、状況の設定自体
が演劇的であるが、これは往時の回想というよりは、当時の
夢想そのままの延長であるだろう。
孤独の不安から湧出する夢想は、いくら美しくても悪いこと
はない。

瀬木慎一   ポストコレクションより    


生きものたちの世界より

「金の星社」

九里洋二、絹谷幸ニ、高松玲子、矢吹申彦、4人のネコの絵が
ここに並んでいますが、興味深いことに、これら4人の作家たち
が表現した、ネコの4態は、ネコそのものの、さまざまな生態
を表現しているというより、作家個人が、それぞれの生活の中
で、ネコとどうつき合っているか、作家とネコとの、日ごろの
関係のあり方が、うかびあがってきます。けっきょくは、作家
自身の心のあり方が、描かれているのでしょう。

大島清次
                    
gallery4