あの光りは、北方の森に春を知らせる曙。
春の暖かさは冬にもまして、人肌を恋しくさせるが、
その男はやって来た時の様に去っていった。
でも私は悲しまない。
旅をするのが、その男の性。
空は青く、小鳥は囀っている。
「一人で居る事には慣れているわ」
美しい吸血鬼は花びらを指でなぞり、
溜息を飲み込んで、大切な羽をとってしまった。
「吸血鬼に蝙蝠以外の羽は似合わないわ」
二つの羽を「とねりこの樹」の枝に掛けた。
枝は重みで折れて、その日から
その樹は弱り、葉が落ちてしまった。
天使の樹、
「とねりこの樹」が泣いている!